第23章 シンデレラ
「藍くん、本当に大丈夫だよ。愛佳と翔くんとも、一緒にいたところだったからさ」
「天音がそういうなら、別にいいけど。ほら、天音の出番は結構最初の方なんだから早く、こっち」
「あ、うんっ」
藍くんに手を引かれて、舞台上の近くまで場所を変える。
「そろそろ始まるね……そんなに緊張してる?」
「えっと……す、少しだけ」
「そっか」
藍くんの両手が、私の頬を包み込む。そして、額を合わせる。こんな至近距離を他の人に見られたら、大変なのでは!? そう思い離れようとするが、彼の手は思いの外強く、それは敵わなかった。
「僕が君に、約束通り魔法をかけてあげるね」
「藍くん……?」
「でも、もう君にはその魔法は必要ないみたい」
「え……?」
「君は自分の意思で、自分の変わりたいっていうただ一つの願いのために、今の天音になったんだ。それは誇っていい。鏡の前の自分を、ちゃんと見てきた?」
「うん……」
「どうだった?」
「凄く……綺麗で、自分じゃないみたいだった」
「そう、それが今の君だよ。それが本当の、星織天音だよ。魔法なんてなくたって、君はこんなにも輝ける。わかった?」
「……でも、その力を与えてくれたのは、藍くんだよ」
藍くんがいたから、変わりたいと強く思うことが出来た。誰かを思うことで、大変なレッスンも慣れないメイクも、ほとんど見たことのない雑誌も見たりした。