第23章 シンデレラ
「あの、貴方は……」
「ああ? 美風のペアの癖に、そんなこともわかんねぇのか?」
「すみません……。アイドル自体、あまり詳しくないので」
「俺は黒崎蘭丸。覚えておけ、ポンコツ」
「ぽっ……!!?」
黒崎さんは、そのまま何事もなく立ち去っていく。その背中を、私は何故かいつまでも見つめてしまった。まるで黒猫のようで。
「いけないっ、早く会場へと急がなくちゃ」
ドレスの裾を掴んで、走り出す。いつまでも誰かの視線が纏わりついているような気がしたけど、私は構わず会場へと急ぐ。
会場へ到着すると、愛佳さんとカミュの姿が見えた。
「愛佳さん! カミュ!」
「遅いですわよ、星織さん。ね? カミュ」
「ふんっ、女の準備とやらはいつでも遅いということだろう」
「まったく……。それにしても、そのドレスどうしましたの? 貴方、そんな上質なドレスいつの間に買い揃えたんですの?」
「いや、これは……そういうものじゃないんです」
「……。そのドレス、どうせ七海からだろう?
「わかっちゃうんだね」
「おっ、綺麗じゃん! 天音」
「翔くんも! ふふ、タキシード姿似合うね」
「まじか!? へへっ、俺のペアったらよ、馬子にも衣裳だなって言うんだぜ。酷くね?」
「素直に褒めるのが恥ずかしいとかじゃなくて?」
「……し、知らねぇよ!!」
何故か翔くんは顔を赤くした。その姿を見ていた私たちは、揃ってくすくすと笑ってしまう。