第22章 人魚の夢
「ちょっと意外なプレゼントかも」
「何が好きなのかよくわからなくて……藍くんって、好きな食べ物もほとんどないみたいだし、趣味もそこまでないみたいだったから、じゃあ明日のコンテストでの写真! 一緒に撮って飾ってもらおうかなって」
「綺麗なドレス姿の天音と僕の写真か……いいかも。でも、飾るなら、いっそ皆の写真がいいな。ほら、カミュとか愛佳の二人もいれてさ」
「それいいね! きっと、二人とも喜ぶよ」
「それはどうかな?」
私は小箱を大事に鞄にしまう。明日、本番が終わった後に開けよう。
「さて……そろそろシンデレラの魔法が解ける時間だね」
「まだ午前零時じゃないよ」
「明日のための、特別な魔法をかけるために、解けていくんだよ。全て」
「ふふ、私も藍くんに魔法をかけられたらいいのにな」
「もうかけられているよ」
「え……?」
藍くんの優しい手が、私の頬を撫でて、額へと口付ける。あまりにもゆったりとした動作で、驚くことも忘れてしまうほどだった。
「それが何なのかは、教えてあげないよ」