第22章 人魚の夢
「ありがとう……話して、くれて」
「ううん。いいの、聞いて……ほしかったから」
「あの時の天音は、頑なに話そうとしなかったのにね」
彼の口元は、薄らと笑みを浮かべて思い出し笑いでもしているのかもしれない。無言で頬を軽くつねれば、彼は私へと視線を向けた。
「本当のことでしょ? 怒った?」
「怒ってないよ。これはお仕置きだよ、お仕置き」
「天音って、時々子供みたいだよね」
預けていた頭を上げると、彼の冷たい唇が、私の頬に触れた。
「っ……!!」
「でも、その表情は子供にしては、色気があるかも」
「藍くんの意地悪……」
「そういうとこも、好きでしょ?」
「……馬鹿」
観覧車が真上に来る。互いに何の前触れも合図もなく、ゆっくりと近づく。優しく触れた唇は、熱いほどの熱を持って離れていく。