第22章 人魚の夢
水族館を出れば、すぐそこに大きな観覧車。
「最後はあれに乗ろうよ」
「いいけど……僕、高所恐怖症なんだよね」
「えっ……そうなの?」
「嘘だよ」
「なっ……!」
「天音、置いていくよ?」
「あっ、待ってよ!!」
夕陽に照らされた観覧車は本当に綺麗。そこまで並ぶこともなく、難なく私と彼は観覧車へと乗り込んだ。
「街の景色がこんなにも見えるなんて……」
「陽が沈んだ時に見れば、夜景が綺麗だったかもしれないね」
「そうかも……」
「天音、こっちにおいで」
手を引かれ、藍くんの隣へと座らされる。藍くんは、私の肩に頭を預けるように凭れると、瞼を閉じた。目を瞑っている時の藍くんは、まるでお人形さんみたいに綺麗で、このまま動かなくなったらどうしようとさえ、思えた。