第22章 人魚の夢
「なんて顔してますの? 美風さんが心配しますわよ?」
「それもそうですね! では、いってきます」
「はいはい。いってらっしゃいな」
愛佳さんに見送られ、しっかりと防寒対策を施し、外へ出る。やはり冷たい風が吹いていて、けれど眩しいほどの太陽が緩和してくれる。
「天気がいい方が、やっぱり好き」
この大切な時間も、少しずつ刻まれては終わっていく。最後の瞬間まで、私は彼の隣で機能と変わらない笑顔を向けていられるだろうか?
握りしめたプレゼント。彼のためだけに選んだ、初めて好きな人に贈るプレゼント。
喜んでくれるかな? そう考えるだけで、胸の奥がぽかぽかする。
彼と出会って、恋をして、想う大切さや思われる幸せを知った。
もっと、沢山の彼を知りたい。知りたい……のに。
「怖いって思うのは、何でかな」
過ぎていく時間が、確実に体内を蝕んで現実を突きつけられる。
醒めない夢の中で、いっそいつまでも同じ時を繰り返してしまえばいいのに。
足を踏み出す、学園の外へと。