第22章 人魚の夢
「よし、出来ましたわよ」
「ありがとうございます!!」
「……チーク、少し濃いですわ」
「えっ!? ど、どうしたらいいですか!?」
「わたくしに任せなさい」
すると愛佳さんは、優雅な動きで手を伸ばし、指でぽんぽんとチークをぼかし始める。手際がよくて本当に助かります。
「ん、これでいいですわね。いつも以上にはしゃいでいますわね、デートですわね?」
「かっ、からかわないで下さい!」
頬が熱くなる。仕事優先の彼とはいえ、朝起きて携帯が光っていた時には驚いた。新着メールを開けば、差出人は藍くん。
――仕事、早く終わらせるね。いってきます。
その一文が嬉しくて、この日のために選んでおいたプレゼントのことを思い出す。私のにやけっぷりがあまりにも酷いせいか、愛佳さんから冷ややかな視線を頂く。
「あ、そういえばカミュが特注のクリスマスケーキを注文したらしいのだけど、クリスマス当日皆でパーティーでもしませんこと?」
「えっ、いいんですか!?」
「わたくしたちも、明日で最後ですからね。もうこうして、互いに会話を交わすこともなくなりますわ」
「あっ……」
そっか、愛佳さんとも明日が終われば会えなくなっちゃうのか。本当にもう、全てが終わっていくのだと思うと寂しくなる。