第21章 この恋心不良品につき 番外編
「俺は……有名店のドルチェを取り寄せるのが目的だ。それくらいなら、優勝資金で事足りる」
「優勝すれば、やはり多少なりとも賞金もあるということですのね。ですが、その程度の価値で本当に貴方は納得するというのかしら?」
「くどい。俺にとって、最も価値のあるものはこの世にただ一つだけ。そして、その次は俺が伯爵アイドルとして更に有名になること。人気になることだ。そのためには、駒もそれなりしっかりしていないと困る。例えば、優勝するためには女性としての一通りの教養が行き届いている方が得だ」
「なるほど……プリンセスに相応しいだけの、女性としての魅力対決ということですのね。確かに、わたくしの家は代々由緒ある家柄ですから、そこに生まれた子らは皆人前に出ても恥ずかしくない教養を一通り身に着けるのを義務付けられていますわ」
「そうでなくては困る。狙うは優勝なのだから」
この男は、優勝するために私を利用すると堂々と宣言しているのだと思うと、本当に変な男だと思った。悪用なのか、単なる利害一致による協力によるものなのか。しかし、両親が了承しているというならば、少なくとも悪い人ではないということかしら?
「まず、本当に両親が了承しているのか、確認して参りますわ」
「疑い深い奴だな。いいだろう、それくらいの方が逆にいい。俺のことを盲目的に信頼されても困る。俺は貴様を信用してペアになってほしいなどと思っているわけではないからな」
「……」
結論から言うと、両親は確かに了承をしていると話してくれた。やはり最終的には、わたくしがこの提案をどう受け止めるかということ。
どう捉えるか。チャンスと取るか、利用と取るか。