第21章 この恋心不良品につき 番外編
学校への帰り、いつものように車で送迎してもらっていたわたくしは、家の門の前に立つ一人の男に目を奪われていた。
なんて、美しい人なのだろうと。
「止めて!」
「お嬢様っ!!?」
わたくしの声に反応し、運転手が車を止める。慌てて車から降りると、彼の視線は一転してわたくしへと注がれる。深い氷のような瞳、男の人なのに肩まである綺麗な髪。どこかの伯爵だと言われても、信じてしまいそうな雰囲気ときっちりとした身だしなみ。
王子様、のような素敵なものとはまったく違っていたのを、覚えていますわ。
「あれ……」
わたくしは、この男を知っている? 確か……テレビで。
「初めまして、お嬢様。私は、カミュと申します。北大路財閥のお嬢様、北大路愛佳様」
「……何故、わたくしの名を」
「それは、ゆっくり後でお話しましょう。本日は大事なご用件で参りました。ご両親には既に話を通しております。後は、お嬢様の許可を頂くのみとなっております」
「嘘ではありませんわね……?」
「ええ。貴方に誓って」
「……。いいですわ、客間で聞いて差し上げますわ」
大きな門を開き、彼と共に中へと入る。この瞬間から、既に全ては始まっていたのかもしれません。