第21章 この恋心不良品につき 番外編
「愚かなのは、どちらか」
わたくしも貴方も、似たようなものですわ。叶わないと知っていても、惹かれる衝動を抑えるのが難しい。
けれどそれが"恋"だというのならば、どうぞ燃え上がればいい。
「優勝するのは、わたくし」
勝利を手にすれば、この想いを捨て去ることも出来るだろう。そう信じることは、更に愚かなのだとわかっていますわ。
芽生えた願望、純潔なる底知れぬ想いを抱いて、そして自らの身分を自覚し始めから手に入らない愛を欲してしまう。
わたくしの家柄は、家族全員が芸能人でそのお陰もあってか所謂お金持ちの家。その家に生まれたわたくしは、幼い頃からお嬢様として扱われ育てられてきた。いつかは自らも芸能人になると誓いながら、そこで出会ったのは思いがけない相手だった。
あれは、今日と似たような冷たい風が吹く冬の終わり。