第21章 この恋心不良品につき　番外編

「神宮寺さんが探していましたわよ」

「何故奴が来た時に、俺の居場所を言わなかった？」

「パートナーとして、貴方のプライベートタイムを守るのも勤めの一つですわ」

「ふんっ。愚民の癖に生意気だな」

「愚民じゃありませんわ。少なくとも、星織さんよりかは」

「……」


　最近のカミュはおかしい。あまり甘いものを取らなくなったし、何故か気付けば視線があの星織さんを追いかけている。


　――好きなんですの？


　一度そう尋ねた時の彼の間抜けな顔を、わたくしは今でも忘れていませんわ。

　あそこまで動揺の色を見せるということは、つまりそういうことなのでしょう。


「貴方らしくありませんわね、本当に」


　そう告げると、彼は本を閉じて怖いくらいにわたくしを睨み返した。


「貴様にはわかるまいな、俺の気持ちなど貴様に理解されたくもない」

「理解したくもありませんわ。でも、あの子には絶対的に美風さんがいますわ。貴方の入る隙なんてあるわけがありませんわ」

「……煩い」


　カミュは立ち上がって、わたくしに背を向けた。立ち去る彼を、わたくしは止められない。この想いが溢れ出してしまうのを止めることは出来るのに。