第20章 白銀の願い
「……ありがとう」
「あんまり嬉しくない?」
「え、なんで?」
「視線が斜め45度、声色にいつもの元気さが23%くらい足りてない」
「そ、そんなことまでわかるの!!?」
「……。わかるわけないでしょ」
彼はというと、コンポタージュの蓋を開けて、一口飲む。それから私の方へと顔を向けると、じっと見つめてくる。
「見られてると……困る」
「どうして?」
「飲み難いでしょ……?」
「僕は気にしないけど」
「あ、笑わないで! それは藍くんくらいだよ」
口元を緩める彼に、そういう問題じゃない! と抗議の声を上げるけれど、聞き入れてもらえるわけがない。もういいもん、気にしないように飲み干してやる!
口をつけたココアは、甘くて暖かくて、自然と笑みが零れる。
寒い冬が終われば、また春が訪れる。その時私たちが、どうしているかなんてきっと誰もわからないし、二人ともわからないだろう。