第20章 白銀の願い
支えられる自分になれるように、支えられてばかりじゃバランスを崩してしまうだろうから。人という字は、明らかに左側の奴が楽をしている! といつか誰かが呟いていた気がする。ああ……言われてみれば、と納得したのが懐かしい。
支え合えることは、幸せなことだと思う。
丁度一年くらい前の私が、今の私を見たら「誰?」と首を傾げそうだ。それくらい、変わったようには思う。えっと……たぶん。
「お、藍に天音じゃん! 久しぶり!!」
「あれ? 翔くん!? わっ、久しぶり!!」
暫く顔を見ていなかった翔くんが、相変わらずの元気な声で駆け寄ってきた。隣から「廊下は走らない」と藍くんの声が聞こえたけど、翔くんは悪びれる様子はなしだった。
「ちょっと翔、天音から離れてくれない?」
「はあ?」
私の手をぎゅっと握り、再会を喜び合う。引き裂くように、藍くんの手が私の手と彼の手を掴んで、無理矢理離した。
「あ、藍くんっ」
「藍、お前なぁ! 別にお前のものってわけじゃないだろう」
「……」
無言で翔くんを睨む藍くん。その光景が可笑しくて、つい笑ってしまいそうになる。翔くんはいつになく真剣な藍くんの雰囲気にすっかり飲まれてしまったのか、身震いを一つして「また後でな!」と脱獄兎のごとく逃げ去った。
ちょっとだけ、可哀想。