第20章 白銀の願い
「あ、ねぇねぇ。私買い出しに行きたい」
「何のために?」
「イヴの日! ね、プレゼント交換したい」
「なにそれ、ちょっと子供っぽいんじゃない? 僕はパス」
「なんで!? 絶対楽しい一日になるよ」
折角だからケーキとか、作ってみたい。愛佳さんに尋ねれば、教えてくれるだろうか? あ、それよりも料理のことなら聖川さんだろうか。
「僕は天音といれるなら、なんだっていい」
「……っ、それやめて!」
顔が熱くなる。反応を見て、彼は笑う。とても自然に、心が欠落しているなんてそんなこと嘘のように。何も感じることがないのだとしたら、彼が見せる笑顔はなんて言い訳すればいいのやら。
長く長く続いていく廊下でさえ、少し楽しい。足取りが軽いのは、全て抱えていた想いを吐き出してしまったからかもしれない。気付かないうちに、私の中に留まっていた。不思議な、感情。
「藍くん」
「なぁに……」
「私も、藍くんのこと守れるようになりたい」