第20章 白銀の願い
鍵の使い方は、意外とあっさりとしたものだった。そしてとても現実的な方法だった。
「えっと……?」
私たちは、あの日以来一度も訪れることのなかった、社長さんの部屋の前にいた。私がどうすればいいのか迷っていると、藍くんは迷わず扉をノックした。中から聞き覚えのある声が聞こえてきて、扉は開かれた。
「よく来ましたー! 今日は、どうかしましたかー?」
相変わらずの社長さんに、藍くんが私から鍵を受け取ると、それを社長さんに渡した。
「七海から預かったものだよ。本番で、このドレスを着るのは彼女だ」
「ふん……なぁるほどぉ。よくわかりましたー!! ユー達はミーに全て任せて、本番に備えて調整して頂戴!!」
「了解」
揃って部屋を後にする。互いに顔を見合わせ、笑い合う。些細な出来事の一つ一つが、また大きな思い出へと変わっていく。