第2章 変わりたいと望む心
「待っているだけでは何も変わりませーん。ミス星織。変わりたいと思うことと、変わろうとすることは似ているようで違いまーす! ユーに、その気持ちはありますかー?」
「……美風さんを探してきます!」
慌てて部屋を飛び出した。迷路のように入り組んだ廊下を、ただ必死に走った。慣れないワンピースがひらひら舞って、なんだか少し恥ずかしい。
私にはまだ何もわからない。理想の私も。
それでも……彼の魔法にかけられた瞬間から、私は望んでいたの。この魔法がいつまでも続けばいいと、もっと知らない自分を見てみたいと。
「美風さん!!」
見つけた彼の後姿。声をかければ驚いたように、彼が振り向いた。
「天音……?」
「美風さんっ……!」
捕まえたっ! しっかりと掴んだ彼の手は、やっぱりひんやりと冷たい。けれど何故か落ち着くのは何故だろう。胸がどきどきしているのは、走ってきたせいだろうか。
「私、変わりたいんです!!」
「え……?」
「美風さんの魔法、もっと見たいです! 信じてみたいです! 私の知らない自分……もっと知りたいですっ!」
「……天音。ふっ、そう……そっか」
可笑しそうに笑い始める彼に、私はどうしていいかわからず。ただ自分の言葉に今更羞恥心を感じて、頬がどんどん熱を持ち始める。
「僕が君に永遠に解けない魔法をかけてあげる」
「……はいっ!」
変わりたい、変われない。そう思い続けるばかりの日々は、変わろうと決めたこの瞬間から終わりを告げた。
私は改めて、彼とうたのプリンセス様コンテストに出ることを決める。