第2章 変わりたいと望む心
「わ、私には無理……ですよ」
「どうして?」
「だって、私可愛くないし……ブスだし。ださいし」
「今も?」
「え……?」
「綺麗にメイクもした、綺麗なワンピースも見立てた。僕のかけた魔法を、疑うの?」
あの時見た自分の姿を思い出す。あれは、私の知らない私だ。どきどきした、驚いた、嘘だとさえ思えた。でも夢じゃない、嘘じゃない。ワンピースの裾を掴んで、実感する。
これは紛れもない現実だと。
「でも、でも無理なんです!! 私にはできません!」
「ん――ミスター美風。彼女の了承が得られないのであれば、ペアとして認めるわけにはいきませーん」
「……そうだね」
美風さんはそれ以上、何も言わず部屋を出て行ってしまった。
「ユーには自分を変えたいと思ったことはありますかー?」
「私は……」
ある、変わりたいと思ったことが。自分がもっと可愛かったら、ほんの少しでも可愛ければ、あの時の告白も少しは違う結末を迎えていたのだろうか? 情けなくもそう思うことが、少しだけあった。
でも何度もそれは無理だと思った。鏡に映る私の冴えない顔が、全てを物語っていたからだ。私はブスだから仕方ない、変われないんだと諦めていた。
「ユーは自分を変えようと努力したことはありますかー?」
「……!」
まるで、この人に見透かされているようだ。
変わりたいと思うことならあった。でも実際、変わろうと努力したことはなかった。そう……何処かで誰かが言ってくれるのを待っていたのかもしれない。
『今のままでもいいんだよ』
そんなこと、誰も都合よく言ってくれるわけがないんだ。