第19章 終末の彼方で
「天音。ドレスを取りに、そろそろ移動しようか」
「あ……もしかして、そのために?」
「本来の目的はね。まぁ、誰かさんのお陰で予定が狂ったけど」
それでも嬉しそうに見えるのは、気のせいじゃないと思いたい。繋いだ手、そしてしっかりと握る七海さんから貰った大切な鍵。
「この先に待つのは、一体どんなものだろうね」
「さぁ? それを僕らは切り開きに行くんだよ。大きな舞台の上でね」
握りしめた鍵の感覚に、終わりが近づいていることを嫌でも知る。あまりにも自然にここまでやってきて、それが終わりを告げようとしていることさえ、私は一向に気付きもしなかった。人に言われるまでわからなかっただなんて、よっぽど呑気なのかもしれない。
「藍くん。私、頑張るから……」
「ん?」
「誰にも負けない! とまではいかないかもしれないけど、前とは違う自分になったこと、変わったこと。それがとても嬉しいこと。全部、ぶつけるから」
「そう、なら僕は精一杯、君に融けない魔法でもかけようかな」
頬に彼の手が添えられる。近づく彼の顔が、まともに見れなくて目を閉じた。
同時に、柔らかい唇の感触が私の唇に重なって、息が止まりそうになる。触れるだけのキスが、こんなにも爆発してしまいそうなほど、鼓動を早くさせるなんて。知らなかった。
「僕が好きになった人だよ? 他の子に、負けるわけないでしょ」
自信に満ちた声が、私を笑顔にする。強気な彼が、とても逞しい。根拠もなければ、絶対さえもないけれど。彼となら、信じていける。ううん、信じてる。
私の大好きな彼の手を、けして離さないと誓うと共に。