• テキストサイズ

【うたプリ】足し算恋愛事情

第19章 終末の彼方で



「天音。ドレスを取りに、そろそろ移動しようか」

「あ……もしかして、そのために?」

「本来の目的はね。まぁ、誰かさんのお陰で予定が狂ったけど」


 それでも嬉しそうに見えるのは、気のせいじゃないと思いたい。繋いだ手、そしてしっかりと握る七海さんから貰った大切な鍵。


「この先に待つのは、一体どんなものだろうね」

「さぁ? それを僕らは切り開きに行くんだよ。大きな舞台の上でね」


 握りしめた鍵の感覚に、終わりが近づいていることを嫌でも知る。あまりにも自然にここまでやってきて、それが終わりを告げようとしていることさえ、私は一向に気付きもしなかった。人に言われるまでわからなかっただなんて、よっぽど呑気なのかもしれない。


「藍くん。私、頑張るから……」

「ん?」

「誰にも負けない! とまではいかないかもしれないけど、前とは違う自分になったこと、変わったこと。それがとても嬉しいこと。全部、ぶつけるから」

「そう、なら僕は精一杯、君に融けない魔法でもかけようかな」


 頬に彼の手が添えられる。近づく彼の顔が、まともに見れなくて目を閉じた。

 同時に、柔らかい唇の感触が私の唇に重なって、息が止まりそうになる。触れるだけのキスが、こんなにも爆発してしまいそうなほど、鼓動を早くさせるなんて。知らなかった。


「僕が好きになった人だよ? 他の子に、負けるわけないでしょ」


 自信に満ちた声が、私を笑顔にする。強気な彼が、とても逞しい。根拠もなければ、絶対さえもないけれど。彼となら、信じていける。ううん、信じてる。

 私の大好きな彼の手を、けして離さないと誓うと共に。

/ 202ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp