第2章 変わりたいと望む心
事務所の中は本当に大きく、確かに迷子になってしまいそうな程だ。
「シャイニング事務所ってどういうところなんですか?」
「芸能事務所。僕はここの所属アイドルなの」
「……へぇ。え?」
「君、テレビとか見ないタイプでしょ」
「見ないですね、まったく」
「だろうね」
"社長室"と書かれた扉の前で、立ち止まる。美風さんは躊躇う様子もなく、扉をノックすると中から「入れ」という声を合図に扉を開けた。
「僕のペアの子、見つけてきたよ」
「おお、早いですねぇミスター美風! 名前は?」
「彼女の名前は星織天音」
「えっと……?」
私が困惑していると、社長さんと思われる人が一枚の紙を渡してくれた。
「うたのプリンセス様企画?」
「ユーはミスター美風のパートナーとして、一年間素敵なプリンセスを目指して合宿を受けてもらいまーす!」
「が、合宿!?」
「うたのプリンセスとはぁ、うたのプリンス様であるアイドルたちが直接自らの足で一般女性をスカウトし、ペアを組みまーす。そして……一年間を通してプロデュースを行い、うたのプリンセス様コンテストに出てもらいまーす!!」
「優勝すれば、特典がついてくるよ。内容はまだわからないけど、きっと天音にとっても悪くない話だと思うけど」
「スカウトって……」
「僕は君をペアとして、スカウトしたつもりだったんだけど」
ええ!!? あれはスカウトだったの!?
常識外れのスカウトを受けた私は、紙をじっと眺めて事の重大さに今更気付くこととなる。