第18章 Winter編 B
「コンテスト、頑張るがいい。俺のペアとて、早々に負けたりはせんぞ」
「私も……負けませんっ。優勝、目指します」
「言ったな? 当日、楽しみにしているぞ」
去りゆく背中を、追うことも出来ない。眺めては、消えていく。
「……っ」
もう一度、涙が溢れた。降り注いだ優しさが、心の中に溜まって辛くなる。どうして……一人しか選べないのだろう。どうして、二者択一なのだろうか。
けれど、そうでなければ報われもしない。誰の想いも、何一つ、報われることはない。
こうして私は、カミュと元の距離へと戻っていく。
十二月の寒空の下、ぎゅっと握りしめた手からは、まだ僅かに彼のぬくもりを残している気がして、やっぱり涙が零れ落ちた。
私にはそんな資格もないだろうに。身勝手なことだ、こうして泣くこと自体。
ありのままの心を、伝えること。それが唯一、私が彼に出来ることだったのだろう。