第17章 Winter編 A
結局、藍くんと共に買い物に出ていた。もう本格的な冬が近づいているせいか、寒くてマフラーをしっかりと巻いた。
「寒い?」
「ああ、うん。だけど私は大丈夫! この寒さだとコンテスト当日はもっと寒くなりそうだね」
「そうだね……天音はクリスマスイヴ、何か予定ある?」
「え……? コンテスト前日の? ううん、特にないけど……なんで?」
「じゃあ、絶対空けておいて。僕にその日をくれないかな」
「いいけど……」
そう言うと、藍くんは「決まりね」と嬉しそうに買い物に集中する。
クリスマスイヴ……イヴといえば、世の中はカップルなどで賑やかになり始める時期。実は意外と憧れを抱いていたりするけど。
――藍くんとイヴを過ごせる……のか。
嬉しかったり、する。
翌日のクリスマスには、もうコンテスト本番になる。あまり浮かれたことを考えている場合でもないのだけど……日程は着実に近づいている。そう考えると、少しずつ緊張が顔を覗き始める。
「天音、あれから特に何もないよね?」
「ん? あれからって?」
「入院したあの後。一応気は張って色々観察しているけど……陰で何かされていたりとか、しないよね?」
「うん、大丈夫だよ。藍くんのお陰だね」
「っ……、何言ってんの。その、当然のことだよ」
「少し顔赤いよ」
「見ないで歩く!」
藍くんの表情の変化に、ちょっとずつだけど敏感に感じ取ることが出来るようになった。同じ無表情でも、実はこういうことを考えているんだとか。こういう何気ないやり取りが、とっても幸せです。