第17章 Winter編 A
「ねぇ、天音。思い出したくはないと思うけど……壱原ユイのこと。彼女にもうコンテストの参加資格は剥奪されて、学園からいなくなったけれど彼女の憎悪はこんなものじゃないような気がするんだ。当日まで、あまり気を抜いたりしないでね」
「はい……」
「わかりやすく俯かないの。ほら、おいで」
差し出された手を、迷わず掴む。こうして手を差し伸べるのも、手を繋ぐのも、私だけであってほしい。時間を重ねるごとく、藍くんへの想いが自分でも何とも言えないものに変わり始めているような気がして、なんだかかっこ悪い。私が。
「買い出し終わったら、僕は仕事だから自分のことは自分ですることね。わかった? 今の天音なら、いい線狙っていけそうだけどまだ優勝には程遠い。しっかり作戦練っていこうね」
「うん!」
そっか、コンテストの後のことを考えてなかったけど。これが終わったら……。
藍くんとは、さよならなんだ。