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【うたプリ】足し算恋愛事情

第16章 滴る果実は囚われる



「そこにいたのは、君と……カミュだった。君の頬を撫でるカミュに、まんざらでもなさそうな君……声をかけることは、出来なかった」
「そんな……! あの時、来てくれて……いたというんですか!?」
「君がカミュを好きならそれでもいいんだ。でももし、そうじゃないのなら……ううん、違う……かな、なんて……言えばいいのかな」


 珍しく、美風さんが言葉を選んでいて、どう私に伝えたらいいか迷っていて。


「ああ、えっと……あ、そうだ、うん。君は、カミュが好きなの?」
「へっ!!?」
「うん、これを先に聞くのがいいような気がしてきた。ねぇ、どうなの? どうせもうカミュに告白されてるんでしょ!?」
「ええ!!? な、なんで知って……!!!」
「今の君の反応で知った」
「(しまった……!!)」


 美風さんはいつもの調子に戻りながらも、私の答えをやはり待っていた。これは……答えなければいけないような空気だ。


「正直、まだちゃんと答えていません。少し考えてみてほしいと、言われました。それから答えを聞かせてくれと」
「そっか……で、実際問題どうなの?」
「……それは」
「肝心な時に助けてくれたカミュを好きになるのは、自然なことだと思うし、別にペアだからとか考えて言いあぐねなくてもいいよ」
「そんなんじゃないですっ」


 手を伸ばせば、彼の冷たい手はすぐそこにある。彼らしいシンプルなシャンプーの香りとか、綺麗なマリンブルーの髪とか。


 この人の隣を望んで、努力してきたこと。他の誰かのではなく、彼の隣を。それは、今……変わってしまっている?

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