第16章 滴る果実は囚われる
約束の時間を確かめながら、荷造りを済ませた。もうこの病室とも、今日でお別れだ。鏡の前で、精一杯のお洒落をして……ふと肩の包帯を取りことを決めた。許可は得ている、もう取ってもいい。
包帯を解いたその素肌は、私が想像していたほどの傷跡はなかったものの、やはり少し痕を残していた。
「だよねぇ……」
隠していると、余計に不審がられそうなので、とりあえず素肌を晒しておくことに決めた。
荷物を抱え、手続きを終えて病院の玄関をくぐれば、そこには久しぶりに見る美風さんの姿があった。
「久しぶり、だね」
「はい……お久しぶりです」
別に何もないはずなのに、無意識に笑顔がぎこちなくなる。美風さんはさりげなく、私の荷物を持つと視線を肩口に向ける。
「あ……っ!」
「それが、入院の原因……?」
「……うん」
「ごめん。僕の、せいだね」
美風さんは、目を伏せると私の手をぎゅっと握った。変わらない冷たい手、それだけでほっとするのは何故だろう。