第8章 わたしの唇
部活にはだいぶ慣れた。
相変わらず球拾いや用具整理を楽しくやってる。
1年だからっていうのもあるけど、私は2年になっても3年なってもレギュラーにはなれないだろうな。
でも別にいいんだ。
私バスケが特に好きっていうより、女子でワーワー集まってなんかするのが好きだから。
練習が終わった後、先輩が先に帰って1年だけでちょっとボール遊びしながら片付けしたりとか…
更衣室で着替えながら恋話したりするのが好き。
後、帰り道にパン屋さんとかで買い食いするのも好き。
練習の後に食べるコロッケサンドが最高に美味しいんだ。
そういえば、部活休んでて山本くんと一緒に帰ってたとき、たまにここのパン屋さん来たなぁ。
そのときはちょっとぶりっこしてメロンパン食べたりしたなぁ。
ま、単純に身体動かしてないからお腹空いてないってのもあるけど。
お店の前のベンチにバスケ部の友達と座って、コロッケサンドを食べながら私は思い出す。
「さやか、山本くんとデートとかするの?」
焼きそばパンを食べてる友達に聞かれる。
「するよ。映画行ったりした。でも家で勉強教えてもらうのが多いかな」
私は答える。
「家で? ヤバくない? 何の勉強?」
私と同じコロッケサンドを食べてる友達がやらしい顔で笑いながら話に割り込む。
「まあでも山本くんだから…。真面目だもんね〜?」
焼きそばパンの友達も笑いながら言う。
「そうだよね〜。てか、なんで山本くんと付き合うようになったの? どっちが告ったの?」
二人が興味しんしんに私に尋ねる。
「ふふ…わたし」
私がそう答えると二人は顔を見合わせて笑う。
「やっぱり! かわいそうに山本くん。たぶらかされて!」
「えへへ」