第6章 しあわせ
駅の改札口を降りて山本くんの姿を探す。
私の部活が始まって放課後いっしょに下校するのが難しくなったから、朝いっしょに登校することにしたんだ。
あっ、みつけた。
壁にもたれてスマホいじってる。
「おはよう! 山本くん。何してるの? ゲーム?」
「おはよう、さやかちゃん。別に…LINEのスタンプ眺めてただけ」
「…なんで?」
「だって、ここ、うちの生徒がいっぱい降りてくる…。どんな顔して立ってたらいいのかわからない…。
明日から本持ってこよ。今日に限って何も持ってなかった」
自意識過剰だなぁ。
私はちょっと茶化して言ってみる。
「山本くんなら教科書読んでても不自然じゃないと思うよ」
「嫌だ。あいつ必死で勉強して首位キープしてるんだって思われる」
へー意外。山本くん、そんなこと気にするんだ。
「いいじゃん。結局一番なんだから」
「ふふ…まあね」
私の言葉に彼は嬉しそうな顔で返事した。