第2章 また明日
彼が私を今度はぎゅーっと抱きしめる。
「好きだよ」
耳元で彼がささやく。ちょっと恥ずかしそうに。
嬉しくて涙が出そうになる。ていうか出てきた…。
「えっ」
彼が身体を離して私の顔を覗き込む。
「…泣いてる? どうしたの?」
泣いてるのがバレたら、もう止めようがないくらい涙があふれてきた。
「大丈夫? なんで? …よしよし」
彼が頭を撫でてくれる。
「わたし…生きててよかったなぁって思って」
「え…? 何それ?」
「わたし…勉強出来なくて…部活もやめさせられて…友達もいなくなって…。
楽しいことなんて何もないし、わたしなんて生きてる価値なんかないと思ってて…」
途切れ途切れに話す私の話を、彼は私の手をギュッと握って聞いてくれた。
「そんな…勉強出来ないなんて、そんなこと気にする必要ないよ。
留年とかさえしなければそれでいいよ。
俺がついてるから…まかせて。
友達いなくなったのはちょっと寂しいかもしれないけど…
俺なんか最初から友達いないよ?
俺に話しかけてくれたらすぐ友達になったのに…」
最後の方、ちょっと笑いながら彼が言う。
「でも山本くん、いつも本読んでるもん…」
私もちょっと笑いながら反論する。
「それは…友達いないからだよ。俺、明日から休み時間とか教室でさやかちゃんに話しかけていい?」
私はうんうんって頷く。
「弁当とかも一緒に食べる?」
「うん…食べよっか」
彼の提案に私はニッコリ笑って同意する。
「ヤバイ。俺、もしかしてリア充? ウケる」
私たちは顔を見合わせて笑う。
…
駅まで山本くんが送ってくれた。
駅までの道を私たちは手を繋いで歩いた。
ちょっと恥ずかしいけど、すごく嬉しかった。
「バイバイ、また明日」
「また明日ね」
改札口の前で手を振って別れる。
また明日って言い合える相手がいるって、すごく幸せなんだなって知った。