第16章 -デート-
この間の元気がないと言っていた次の日が
検査の日だったらしい。
オレは通り慣れた総合受付を抜けて、
ひかりと診察室に向かった。
でも、ひかりが向かったのは、
オレがいつも行く
親父の病棟とは違う棟だった。
「ひかりちゃん。どうぞ。」
診察室まで行くと、
ひかりと顔見知りなのか、
看護師さんが優しく声を掛けてきたので、
その声に促され、
オレはひかりと診察室へ入った。
つぅか、今更だが、家族ではないオレが
診察室に一緒に入っても
大丈夫なのだろうか?
「お…♪」
診察室に入ったオレたちを見た医者は、
なぜだか嬉しそうにしていた。
40代くらい…か?
実年齢より若く見えるタイプだと思った。
医者は嬉しそうにしただけで、
結局オレは咎められることなく、
そのまま診察室に入った。
つぅか、医者も看護師も、
あまりオレの存在を意識していないようだった。
「ひかりちゃん。
この間から変わったことはあるかい?」
医者は淡々とひかりに質問を投げかける。
「いえ。足は相変わらず…。」
「そうか。検査結果だけどね。
今回も異常無しだ。」
……‼︎よかった。
オレはホッとした。
ひかりもやっと
肩の力を抜いたようだった。
でも、医者はさっきよりも真剣な表情で
ひかりを見つめて話し出した。
「だけどね、異常無しとは言ったが
あくまでも”現状から”という意味だよ。
それはわかっているね?
今まで通りの生活で問題ないが、
長時間の激しい運動はNGだ。」
「…わかっています。」
念を押すように言う医者に、
ひかりは少し悔しそうに頷いた。
「そういえば…
この間と変わったトコひとつあるね♪」
医者は重い空気を変えるかのように、
いたずらっぽい目をして
オレを見てから、ひかりに言った。
「彼氏♪できたんだね♪」
「…なっ⁈」
……⁈⁈
「リハビリは今まで通り
2週間に1回は通うように。
今日は以上だよ。
あとは2人でごゆっくり♪」
オレの様子を見て、
医者は楽しそうに言うと、
最後はニッコリ微笑んで、
オレたちを診察室から送り出した。