第16章 -デート-
次の日、親父の病院に行ってから、
待ち合わせの駅前に向かった。
ひかりはまだ来ていなかった。
駅から出てきたトコを見られたら、
どこに行っていたのか
説明しなければならない。
やましいことはないが、
オレにとっては好都合だった。
オレは少し早く着いたのだが、
ひかりも待ち合わせ時間より早く来た。
「ごめんね。待った?」
「いや。つかまだ時間早ぇし。」
私服のひかりを見るのは、
いつぶりだろうか?
合宿か…?
そんなことを考えながら、
ボーッとして電車に乗っていた。
オレがひかりに見惚れていたのもあったが、
珍しくお喋りなひかりも静かだった。
「次だよ。」
…ん?
地元から電車で2駅目で、
ひかりは下りると言う。
でも、この駅には特に
デートできるような所はない。
そのことはオレはよく知っていた。
午前中行っていたからだ。
まさかとは思ったが、
ひかりの「行きたい所」とは、
親父も入院している病院だった。