第14章 ---Another side---
翌日…俺は雑念を取り払いたくて、
いつも以上にガムシャラに練習してから、
ひかりに会いに行った。
待ち合わせは帝光中の前だった。
夕方だったが、
今日はどこの部活も休みなのか、
もう誰もいなかった。
「平澤くん!お疲れさま。
ごめんね、急に…。」
「おう。」
ひかりはいつものように
明るく声を掛けてきたが、
どことなく緊張しているのはバレバレだった。
「えっと…あのね…」
でも、ひかりは真っ直ぐ俺を見ていた。
オレは何も言わず、
ひかりのことばのつづきを待った。
「虹村くんと付き合うことになった。」
……。
………。
わかってたけど…本人の口から聞くのは、
思ってたよりキチぃな。
………。
「で?オレにどうしてほしいの?」
やっとの思いで出たことばは、
そっけないものだった。
オレの表情やことばの響きも
冷たいものになっていると思う。
要は俺は失恋したわけだ。
さすがにひかりのことを考えてやれない。
俺もまだまだだな…。
「えっと…その…。」
ひかりは一瞬目をそらし、
言い淀んだが、すぐにハッキリ言った。
「わたしね、
平澤くんに甘えてたと思うの。
”今まで通り”って…。
でも…やっぱり…
平澤くんはわたしに気持ちを
伝えてくれたから…
わたしも…ちゃんと言わなきゃって。
わたしね、本当は中学の時から…」
…‼︎
思わず俺はひかりを抱きしめて、
ひかりのことばを遮った。
どうしても、
ひかりの口からは聞きたくなかった。