第54章 -旅立ち-
「ひかり‼︎」
オレは咄嗟にひかりを抱き締めた。
「ひかりっ‼︎なんでココに…⁈」
「修造…‼︎痛いってば…」
「あ…わりぃ。」
ひかりのことばに力は緩めたが、
オレはひかりをはなさなかった。
「何から話せばいいのかな…」
ひかりはオレに腕をまわしたまま、
顔だけあげてオレを見つめた。
「まーずーは‼︎」
ピンッ‼︎
「いてっ‼︎」
ひかりが背伸びして
オレにデコピンをしてきた。
手加減無しのガチの…。
「修造のバカッ‼︎」
「バカッ‼︎修造のバカッ‼︎」
「バカバカ言い過ぎだろ…」
「言い足りないよ‼︎バカ修造‼︎
出発は明日って言ってたのはだーれ?」
ひかりがジーッとオレを睨んでいる。
「オレ…です。」
「バカ修造…。」
「つぅか、なんで…⁈」
「手紙…」
「…⁈」
「あの手紙…
昨日、修造がお風呂に入ってる時に
こっそり入れに行ったの。
昨日入れておいて、今日…最後の日は、
ゆっくりいられるかな…と思って…。
でも、その時…
飛行機のチケット見ちゃって…」
ひかりはオレから離れようとしないで、
ずっとくっついたままだった。
まるでオレが離れないように
捕まえているみたいに…。
「なんで…違う日を言ったの?」
「…⁈おばさんたちから聞いてないのか?」
「…‼︎ママたちには言ってたの⁈」
2人で顔を見合わせる。
「あぁ。」
「なんでわたしにだけ…⁈」
「それは…」
「それは…?」
ひかりはジーッとオレを見つめ、
目をそらさない。
「ひかり、泣くの我慢するだろ?」
「え…?」
「ひかり、絶対オレの前で泣くの、
我慢すると思ったから…。
これからただでさえ会えなくなって、
我慢させるのに…
そう思ったら、言えなかった。
ごめん…オレのワガママだよな…。」
ひかりはずっと黙って
オレのことばを聞いていた。
「わたしのことを…想ってくれてたんだね。
デコピンしちゃってゴメンね。」
「いや…オレが…ゴメン。」
「”ゴメン”はもう無しね。
修造…ありがとう。」
そう言ったひかりは、
優しくオレにキスをした。