第54章 -旅立ち-
それからギリギリの時間まで、
ひかりと一緒にいた。
遅くなるから帰るように言ったけど、
ひかりは帰らなかった。
心配な反面、
少しでもひかりと一緒にいられるのは、
やっぱり嬉しかった。
やっぱりオレはワガママでガキだ…
オレのワガママで
ひかりに出発の日を言わなかったのに、
結局淋しくなって…
しかも、ひかりにバレてるし…
搭乗口の前…
ひかりはやっぱり泣いていなかった。
「大丈夫だって。
修造とバイバイしたあとも泣かないよ?
だから、心配しないで?」
「…おう。」
「修造こそ泣かないでよ〜?」
いたずらっ子のように
ひかりがオレの顔を覗き込んでくる。
「な…泣かねーよ‼︎」
「着いたら、連絡してね。」
「おう。」
「たまには電話してね。」
「ひかりもしろよな?」
「もちろん。」
「メールもだぞ?」
「うん。」
行かなきゃ行かなきゃと思うのに、
少しでもひかりとの時間を
伸ばそうとしてしまう。
「そうだ‼︎あのな…」
「なぁに?」
「今日、ホワイトデーだろ?
お返し…ひかりの部屋に置いてあるから。」
「え⁈そうなの⁈」
「あぁ。」
「楽しみ‼︎なんだろう?キャンディかなぁ?」
ひかりのワクワク顔が可愛い。
最後に可愛い顔が見れてよかった。
今言ったら、ひかり、こっから帰るとき…
少しは楽しい気持ちで帰れる…よな。
「んじゃ、行ってくる。」
「うん!いってらっしゃい。」
「親父の病気治ったら、
すぐ帰ってくるから。」
「うん!待ってる‼︎」
さすがにココではキスはできない…よな。
オレはひかりをギュッと抱き締めて、
搭乗口に向かった。
ひかりもオレも…
最後はお互い笑顔だった。