第53章 -バレンタイン-
「あ♪修造、おかえり!」
家に帰るとひかりが先に帰っていた。
ひかりの笑顔に出迎えられ、
さっきまで1人でなんとも言えない…
心がポカンとしてたような気がしてたのに、
それがあっという間に晴れていった。
「あぁ…ただいま。」
ひかりの声が、
ひかりの存在が心地良い。
「…もらわなかったの?」
オレの側に駆け寄ってきたひかりが
キョトンとしながらオレを見上げる。
「…?何がだよ?」
「…チョコ…ってゴメン。
ちょっと意地悪だったね。」
不安そうなひかりの頭を軽くこずく。
「いつものバスケ部のヤツだけだよ。
今年は桃井のチョコも安全だったしな。」
「…ゴメン。」
「いや…まぁ…なんつぅか…」
「…?」
「妬いて…くれてんなら、
まぁ…嬉しくなくも…ない。」
「…っ⁈あ…えっと…」
だぁぁっ…何言ってんだ、オレは⁈
「心配すんな。
ひかりが心配するような…
不安になるようなコトなんか、
なんもねーよ。…っ‼︎手ぇ洗ってくる!」
オレはひかりの頭をグシャッとして
ひかりに顔を見られないようにしてから
洗面所へ行った。
「はぁぁぁ…」
手を洗ってついでに顔も洗う。
ひかりに言ったコトに
もちろん嘘はねーけど、
あんなコト言った自分が
なんつぅか、こっ恥ずかしい…。
深呼吸をして息を整えていると、
ひかりが洗面所に顔を出した。
「修造?おなかすいてる?
おやつ食べられる?」
「ん?…おう!」
「ほんと⁈じゃ、用意するね♪」
「あ!ちょっと待て!」
ニッコリ笑顔で
キッチンへ行こうとするひかりを
ちょいちょいと手招きして呼び止める。
「なぁに?」
ひかりは不思議そうに
オレの前に戻ってきた。
…チュ。
「…っ⁈」
「おやつの前に腹ごしらえ…だな♪」
「修造っ‼︎」
「着替えてくるな。」
真っ赤になってるひかりを置いて、
オレはいったん部屋に戻った。
さっきみたいに気持ちを言うのは、
やっぱりちょっとこっ恥ずかしいが、
キスは…ガマンできなかった。
すげぇ矛盾。