第53章 -バレンタイン-
次の日…
つまりバレンタイン当日…
オレは柄にもなくソワソワしていたが、
ひかりは朝からいつも通りで、
普通に学校に行った。
オレも今日は午前中だけだが、
学校に向かった。
…今日は心なしか人が多い気がした。
「虹村じゃん!久しぶり〜!」
「おぉ。」
1年の時からの腐れ縁の
飯田が声を掛けてきた。
「虹村、チョコ何個もらった?」
「は⁈」
「はぁ〜っ…
これだから、モテる奴は…。
無意識でもらえんだもんなぁ。」
「だから…なん…⁈……‼︎
オマエ…変わんねぇな…」
あぁ…そういうことか。
バレンタインだから、
今日は人が多いのか…。
「んじゃ、
”お姫さま”からもらったの?」
「な…っ⁈おま…っ⁈」
不意打ちで飯田に言われ、
オレは思わず固まってしまった。
飯田にはひかりと付き合いはじめて
すぐにバレていて、会うたびに
ひかりのことを聞かれていた。
相談したコトはねぇんだけど。
「放課後かよ?いいよなぁ。」
今、ひかりんちに住んでるコトは、
さすがに気付かれてねぇな。
「虹村ーー!客ーー!」
飯田のことばに答えられずにいると、
別のヤツにドアの方から呼ばれた。
助かった!
だが、そう思ったのもつかの間、
クラスのヤツが”客”と言って
指差していたのは、
知らない女子だった。
さすがのオレでももうわかる。
「うわぁ…もう1個目かよ?」
オレの肩越しに
飯田もドアのほうを見て、
同じコトを思ったようだった。
行かないでおくか…
バスケ部でもらったりする
はっきりと義理チョコと
わかるものはもらっていたが、
本命であろうチョコは、
中学に入ってからは受け取っていない。
ひかり以外。
でも、昨日チョコを作っていた
桃井を思い出すと、
受け取らないにせよ、
せめて自分で言わないといけない…
そう思った。
「なんだ?」
何の用だかわかっているのに、
白々しくドアの所にいる女子に聞く。
「あの…虹村先輩…コレッ!」
真っ赤になって紙袋を差し出された。
苦手な瞬間…
でも、向こうだって精一杯の気持ちで
オレなんかに告白してくれている。
「彼女いるから…悪りぃ。
受け取れねぇ。」
オレは誠心誠意…断った。