第53章 -バレンタイン-
「ん…ふぁ…っっ…」
「ん…。」
どちらからともなく、唇をはなし、
お互い息がまだ荒かったが、
オレはひかりの頭を撫でた。
「はぁ…はぁ…しゅ…ぞ…?」
とろんとしたひかりの眼差しと
ひかりの甘い吐息に
こっちが限界寸前だった。
「そぉいや、
オレにはチョコねーのかよ?」
冷静を装いながら、
オレは気になっていたコトを聞いた。
「え?」
「さっき…作ってなかったから…」
さっき桃井と作っていた分は、
桃井が持って帰った。
別に甘いもんが
すげぇ好きってわけじゃねーけど、
ひかりからのなら…ほしい。
「さぁ?どうかなぁ?」
「な…⁈」
「明日のお楽しみね♪」
…っ⁈
悪戯っ子のようなひかりのことばに、
オレはドキッとしてしまう。
…ったく。
ひかりに翻弄されっぱなしだよな。
「そういえば、
去年は渡せなかったなぁ…」
「そうだな。」
つぅか、去年の3月の練習を
ひかりが見に来てから、
もうすぐ1年たつのか…。
いろんなコトがあったよな…。
1年前は…まさか、
ひかりとこんなふうに…
付き合うコトになるとは、
まったく思っていなかった。
きっかけは、
ひかりが練習を観にきたコトだが、
諦めないでよかった…
心底そう思った。