第53章 -バレンタイン-
「虹村さん、どーぞ♪」
…どーぞ…ってなぁ…
満面の笑みで桃井に言われてもなぁ…
目の前に置かれた生チョコを取るのを
どうも躊躇してしまう。
今日は特攻隊長?の黒子もいねーしな。
オレは桃井の期待を込めた眼差しに負け、
思いきって一切れ口に運んだ。
「…っ‼︎」
「ど…どうですか⁈」
「まぁ…悪くは…ない。」
ほんとに桃井が作ったのか⁈
そう思えるほどの出来栄えだった。
「よかった〜〜〜‼︎
ひかりさんのおかげです〜‼︎」
「もう‼︎修造ってば、そこはちゃんと
”美味しい”って言ってよ〜。」
「あ…わりぃ。
桃井、ちゃんとうまかった。」
桃井は十分喜んでいたのだが、
ひかりに促され、
オレはもう一度桃井に伝えた。
「ありがとうございますっ!」
「明日は頑張ってね。」
「あ…は…はいっ‼︎えっと…
が…頑張りますっ‼︎」
桃井は保冷バッグにチョコを詰めると、
嬉しそうに帰っていった。
「ふふ…さつきちゃん、可愛いね。」
片付けを終えたひかりは、
やっとオレの横に来て、
ソファに座った。
「お疲れさん。」
そういえば、今日はまだ
ひかりに触れていなかったと思い、
オレはゆっくりひかりの頭を撫でた。
「…修造?」
ひかりは不思議そうに
オレを見上げたが、
すぐに安心したように、
オレにもたれかかってきた。
…っ⁈
「そろそろやめとけって。」
本当はもっとこうしていたいが、
そろそろおばさん達が帰ってくる。
「今日はお父さん出張だし、
お母さんも朝まで帰れないって。」
そう言ったひかりは、
さらにオレの腰に腕をまわしてきた。
…っ⁈
ひかりの温もりや匂いが
どんどんオレの理性を
狂わせようとする。
落ち着け…オレ…。
「こうやってくっついて喋るのも…
落ち着くね。」
「あぁ。」
オレはある意味落ち着かねーんだけど。
そうとは言えず、
オレはひかりの肩を持ち、
いったん離れ、ひかりを見つめる。
「修造?どうしたの?」
…チュ。
「しゅ…⁈」
何も言わずにキスをすると、
ひかりは真っ赤になっていたが、
オレはキスをやめなかった。
角度を変えて深く…深く…
何度も何度もキスをした。