第53章 -バレンタイン-
「できたーーー‼︎」
桃井の声にオレはやっと
キッチンへ行くコトにした。
「うわ…すげぇコトになってんな?」
キッチンはチョコレートまみれで、
普段より荒れていた。
「す…すみませんっ。」
「大丈夫大丈夫!
さつきちゃんが頑張った証だって♪」
「お!でも、すげー。
ちゃんと出来てんじゃんか。」
テンション下がりそうな桃井に
オレは慌てて声を掛ける。
たしかに見た目は大丈夫そう…な、
生チョコができていた。
「絶対美味しいって!
あとは可愛くラッピングするだけだよ♪」
「…はいっ!」
ひかりのことばに、
桃井は嬉しそうにラッピングを始めた。
恋する乙女…ってヤツか?
オレはふと笑未のコトを思い出す。
いつか笑未も…
…って、前に海斗くんだかなんかが
好きとかなんとか…言ってたよな⁈
「修造?修造ってば‼︎」
「あ…わりぃ。」
「どうしたの?」
「いや…なんでもねー。」
笑未のコト考えて、
つい父親の気分だった…とは言えない。
「変な修造。熱でもある?」
ひかりはふっと
オレのおでこに手を伸ばした。
「…っ⁈お…おい‼︎」
「熱はなさそうだね。」
「だから、ねーって‼︎」
平然とひかりは言うが、
オレは恥ずかしくて、
ついひかりからはなれた。
「きゃー♡ラブラブですね♡」
「…っ⁈あ…さつきちゃん‼︎
別にそういうわけじゃ…」
はぁ…ったく!
こうなるコト考えてなかったのかよ…
「あ…えっと…味見‼︎味見しよ‼︎」
ひかりは自分が作った分と、
桃井の練習用、それから、
桃井がラッピングして
余った端の部分を皿に載せ、
コーヒーと一緒に出してくれた。
見た目は…どれも遜色ねぇ…が…
桃井のヤツはほんとに大丈夫なのか?