第53章 -バレンタイン-
よく見ると、ひかりと桃井は
大きなスーパーの袋を抱えていた。
「明日はバレンタインでしょ?
チョコをさつきちゃんと作るの♪」
あぁ…明日は2月14日かぁ…
…って…バレンタイン⁈
「は⁈チョコ⁈」
キッチンに向かいながら、
さらりと言うひかりに、
オレはポカンとしてしまった。
いや…桃井にチョコ作りとか…
「やっぱり虹村さんも…
わたしの手作りじゃ心配ですよね…」
「あ…いや…
そぉゆうんじゃなくてだな。」
オレの表情から察したのか、
桃井はシュンと苦笑いした。
オレは慌てて否定するが、
そのことばに説得力はない。
「大丈夫大丈夫♪
ゆっくり丁寧に作れば、
美味しくできるよ。
だから、一緒に頑張ろう‼︎
きっと黒子くんにも気持ちが伝わるよ。」
「ひ…ひかりさんっ‼︎」
…‼︎そういうことか。
黒子に渡すチョコを
失敗するわけいかねー桃井が
ひかりにチョコ作りを
習いに来た…ってコトか。
オレは邪魔になると思い、
リビングでテレビを見るコトにした。
「よし‼︎頑張ろう‼︎」
ひかりにはかなわないにしても、
桃井もエプロン姿だけは
いっちょまえにサマになってる。
…?
いや…ひかりも一緒なんだし…
バレンタインは明日…
ひかり…オレへのチョコも…
一緒に作る気か…?
オレはつい失敗した時のコトが
頭によぎってしまい、
チラチラとキッチンを見ていたので、
テレビの内容が
まったく頭に入ってこなかった。