第52章 -旅行-
旅館仲居
「いらっしゃいませ。
露木様2名様ですね。
貴賓室・椿の間にご案内します。」
1月中旬の土日で、
オレとひかりは温泉旅館に来ていた。
もちろんあの初詣のペア旅行券で。
案内された部屋はかなり豪勢で、
離れにあり、内風呂まで付いていた。
ひかり
「すごーーい‼︎」
虹村
「すげぇな…」
オレとひかりはポカンとしていたが、
1つ疑問があった。
たしか、部屋は別って…。
ひかりとの旅行をお願いする時に
オレが言い出したコトだが、
そのあとおばさんが
旅館に連絡したはずだった。
仲居
「仲のいいご姉弟なんですね。」
ひかり
「え…?」
仲居
「ご予約のお電話をいただいた際、
お母様が仰っていたので。
弟さんの留学前にお2人で…って。」
虹村
「は…⁈…いてっ…。」
思わず素で反応してしまうと、
ひかりに脇腹をこずかれる。
ひかり
「あはは…そうなんですよー。
生意気でちょっと無愛想だし、
姉のコトも呼び捨てで、
あんまり敬われてないんですけど(笑)
でも、可愛くて…」
ひかりは仲居に話を合わせていた。
ひかりのヤツ、なんか知ってんのか⁈
仲居
「男のコだとそうですよねぇ。
お食事はお部屋で
18時からとなりますので、
何かございましたら、
内線でご連絡くださいね。」
そう言うと人の良さそうな仲居は、
部屋を出ていった。
虹村
「はぁ…どういうコトだよ…」
いや…そりゃ、嬉しいが…。
ひかり
「たぶん…お母さんが…」
虹村
「ひかりも知らなかったのか?」
ひかり
「…うん。
2部屋取ったんだと思ってた…。
景品のペア旅行券だったし、
ムリだったのかな…」
…⁈ひかりも知らなかったのかよ⁈
ひかりもポカンとしているが、
ひかりの咄嗟の適応力に
オレは脱帽していた。
よくわかんねーけど、
”姉弟”として接するにしても、
ひかりはそのままでいいとして、
オレはひかりのコトを
”姉貴”とか”姉ちゃん”とか、
ぜってぇ言えねー。
虹村
「つぅかさ…」
ひかり
「なぁに?」
虹村
「”生意気で無愛想”で悪かったなー。」
ひかり
「…⁉︎あれは…!その…」
虹村
「そんなふうに思ってたんだなー。」
オレはわざと少しひかりに意地悪を言う。