第6章 -帰り道③-(現在)
「ね、1コだけ…ワガママ言ってもいい?」
また唐突にひかりさんが言う。
「…なんですか?」
大抵のコトには驚かねぇぞ…
と、自分の中で気合いを入れてから
オレは聞き返した。
「もう1回…ギュってしてくれる?」
………⁈⁈⁈
今度こそ、オレは声が出なかった。
つか、気合い入れたはずなのに、
その気合いもあっけなく崩れた。
夜じゃなかったら、
本当にヤバかったと思う…オレの顔…
ひかりさんは黙ったまま俯いている。
どうするか…
ギュ…
オレは1年前より優しく(たぶん)
ひかりさんをふんわり抱きしめた。
ひかりさんは160cmくらいあるはずだが、
1年前より小さく感じた。
「ひかりさん、縮みました?」
顔を見られない安心感もあり、
オレは少しからかうように話しかけた。
「虹村くんが大きくなったのー。
さっき言ったでしょ?」
ひかりさんは
スネたように返事をする。
その間もずっと抱きしめたまま…
ひかりさんの身体は
柔らかくてあったかい。
いい香りもする。
オレはそのままひかりさんの髪に
顔をうずめてしまった。
やべぇ…
キスしたくなってきた。
さすがにそれはダメだよなぁ…
そんなアホなコトを考えていたら、
今度こそ、オレの邪念を読み取ったのか、
ひかりさんの方から、スッと離れた。
「うん…元気出た♪
ごめんね、変なお願いして。
ワガママ聞いてくれてありがとう。」
「いえ…。」
邪念は…バレてないな。
「じゃ、帰ろうか。送るよ♪。」
…⁇⁈
デジャヴかよ⁈
「ひかりさん…オレが送りますから…。」
はーぁ。なんだったんだ⁈
結局1年前と何も変わってないのか?
「あの時と一緒だね♪」
「は…?」
ひかりさん…わざとだな?
「”1人で帰れます”って
置いてかれたら、
どうしようかと思った。」
そんなこと、できるわけないのに、
ひかりさんは本気で安心したようで、
嬉しそうにオレを見上げていた。