第6章 -帰り道③-(現在)
俺が1人で先に帰るなんてことは
もちろんなく、
そのままひかりさんちへ向かった。
あと少しでひかりさんちに着いてしまう。
オレは気になっていたことを
やっぱり聞くことにした。
「”元気出た”って…
ひかりさん、元気なかったんですか?」
ひかりさんは驚いたように
目を大きく見開いていた。
「えっと……うん……。
でも…元気出たから、もう大丈夫!」
明るい声で言うが、
やっぱり何かを誤魔化すように
わざとらしかった。
「1年前…こうやって送った帰りに、
怪我の話…オレだから話せたって
言ってくれましたよね?」
ひかりさんは応えない。
オレはそのままつづけた。
「今日の元気がない話は、
今のオレにはできないんですか?」
「………。」
何かを考えるように
ひかりさんは黙ってしまった。
さっき「ギュってしてほしい」
と、頼まれたし、話してくれるだろうと、
多少なりの自信はあったのだが…
「次に会ったときでも…いい?」
オレの自信は、
半分正解で半分不正解だった。
「…わかりました。いいですよ。」
抱きしめろとか
自分から言ってきたくせに、
いや、命令形ではなかったか…
今すぐ話してくれないことに、
少し腹がたった。
でも、”次に会ったとき”という言葉に
オレは惹かれていた。
話の内容は明るくないのかもしれないが、
これはある意味次会う約束だ。
ひかりさんを無事家まで送り、
挨拶して帰ろうと歩き出した時、
ひかりさんはまたオレに後ろから言った。
「な…なるべく早く言うねっ!
そしたら…聞いてくれる?」
少し焦っているように見えるひかりさんは、
なんだかとても可愛く見えた。
「”なるべく早く”ならいいですよー。
つか、オレ、けっこうセッカチなんで。」
とりあえず生意気な返事をして、
オレはひかりさんの家を後にした。