第6章 -帰り道③-(現在)
-帰り道(現在)-
ひかりさんは、今日観た部活の様子や、
桃井と仲良くなれたのが嬉しかったこと、
自分のバイトのことなど、
次から次へといろんな話をしてくれた。
ひかりさんの話を聞きながら、
オレはあの時のことを思い出していた。
ひかりさんが泣いた帰り道のことを。
まぁ、そんなこと絶対言えねぇけど、
でも、あの公園の前に来た時、
ひかりさんが突然言った。
「この公園で…虹村くん、
ギュってしてくれたよね。」
…⁈⁈⁈
さすがのオレも一瞬赤面するのが、
自分でもわかった。
暗いから、顔色までわからないのが、
せめてもの救いだ。
ひかりさんは、こういう時…
なんていうか、
エスパーなんじゃねーかと
思ってしまうくらいだ。
「あの時、本当に元気が出たんだぁ。
あとね、不謹慎だけど、
ちょっと嬉しかったの。」
「…嬉しかった?」
そう聞き返すのがやっとだった。
うぁー‼︎
こんな焦ってるの、
ぜってぇバレたくねぇ。
「うん。あの時、
途中から敬語抜けてたでしょ?」
やべっ‼︎気づいてたのか…。
つか、1年も前のこと、よく覚えてんなぁ。
って、オレもか。
ひかりさんは俺を見て、
クスクス笑いながら話を続ける。
「先輩の話だから、
聞いてくれてるんじゃなくて、
なんていうか…
1人の友達として?というか…
もしかしたら、ちょっと…」
「”ちょっと”?なんですか?」
「ううん。
虹村くんが親身になって
話を聞いてくれたことが、
本当に嬉しかったんだよ。」
ひかりさんが何かを誤魔化したのは、
わかっていたが、
オレはそれ以上掘り下げなかった。
つか、そんな余裕ねぇっ‼︎
余裕あるふうに見せるだけで、
精一杯だっつぅの。