第5章 -帰り道②-(回想)
「ごめんね、急にこんな話…。
あ、虹村くんが言ったことは、
なにも気にしてないからね?ほんとだよ?」
鈍感なのか鋭いのかわからない。
オレが気にしていたことに気づいたのか、
話し終えたひかりさんの最初のことばは、
オレを気遣うことばだった。
「今日、平澤くんが怪我した瞬間、
すごい怖くて…
でも、何も考える余裕がないくらい
ずっとバタバタして…
色々終わって気が抜けてた時に
虹村くんに会って…
不安な気持ちをぶつけちゃった。
最低だよね。ほんとにごめんね。ごめ…」
……⁈
ひかりさんは、
急にポロポロ涙をこぼした。
「あ…れ…?やだ…恥ずかしいね。」
慌てて涙をぬぐうひかりさん…
ギュ…
気づいたら、何か言う前に
オレはひかりさんを抱きしめていた。
ひかりさんは抵抗もせず、声も出さず、
そのまま俺の腕の中で静かに泣いていた。
いつまでも泣いていてかまわなかったが、
その涙は平澤さんのためのものだと思うと、
俺はまた、あのなんとも言えない
胸のつかえを感じていた。