第5章 -帰り道②-(回想)
「ごめんね、もう大丈夫だよ。」
ひかりさんはすっかりいつも通りかのように
顔をあげた。
声はいつも通りだが、
公園の街灯に照らされたひかりさんの表情は、
目の奥が少し淋しそうなままだった。
「あ、すみません…オレ…」
つか、我にかえると恥ずかしい。
なに勝手に抱きしめてんだ、オレ⁈
でも、そんな動揺は表に出さず、
オレもひかりさんからそっと離れた。
「ありがとう。虹村くんは優しいね。」
いや…優しいからとかじゃなくて…。
オレは少しだけ後ろめたかった。
「あ、時間…‼︎帰ろうか。送るよ。」
「…はぁ⁈」
オレがひかりさんになんて言おうか
考えていると、
まさかのひかりさんのことば…。
なんつぅか、気が抜けた。
まぁ、いい意味で?
ちょっと暗い空気が消えたが…。
「だって、わたしのせいで
遅くなっちゃったし、
後輩、こんな時間まで連れ回して…」
「いや、まぁ、後輩だけど…オレ、男だし。
いいですから。オレが送ります。」
男として見られてないのか?
後輩だからか?
2年しか変わらないっつぅの‼︎
結局、オレがひかりさんを送った。
「色々ごめんね。ありがとう。
気をつけて帰ってね。」
「ちゃんと寝てくださいね。」
オレはひかりさんの目を見て言う。
「ありがとう。」
嬉しそうに微笑みながら、
ひかりさんもオレの目を見て言ってくれた。
「じゃ。失礼します。」
挨拶してオレが帰りかけた時…
「あのね、さっきの話、
自分から誰かに話せたの、
虹村くんが初めてだったの!
ちょっとラクになったよ。
本当にありがとう!」
ひかりさんは後ろからオレに言った。
オレは一瞬びっくりしたが、
振り返り、軽く手を振った。
「早く寝ないと朝練遅刻しますよー。」
また可愛げないことを言ってしまう。
だが、ひかりさんのことばは
オレのナゾの胸のつかえを
すーっと取り除いた。
オレはひかりさんのことが好きなんだ…。
その時、気づいた。