第38章 -----Another side-----
灰崎
「あれ〜?ひかりちゃんじゃーん。
進学校の優等生がサボりかよ?」
ひかり
「別に優等生じゃないもの。
そっちこそ…サボりじゃない。」
灰崎くんは、
上はTシャツ、下は制服のズボン…
という格好だった。
よく見るとベンチに
学校のバッグと、
ブレザーとシャツが置いてあった。
灰崎
「あ⁈オレみたいなのは
いつでもサボってい〜んだよ。」
灰崎くんは練習をすぐサボる。
上手いけど、
他の部員とのコミュニケーションが
心配だと前に修造が言っていた。
わたしが行ってた土曜日は、
ちょこちょこ来てたけど、
たしか辞めたって修造が…。
また修造のことを思い出しちゃった。
今日何度目だろう…。
灰崎
「なぁ、そっちじゃなくて、
フェンスん中入ってこいよ。」
ひかり
「あのね〜、わたし先輩なんだけど?」
注意しながらも、
わたしは促されるまま中に入った。
灰崎
「もうバスケ部辞めたし、
先輩とか関係ねーよ。」
ひかり
「なんで…辞めちゃったの?」
灰崎
「別に…。
なぁ、それよりよ〜、ひかりちゃん、
虹村さんなんかやめて、
オレにしとけよ?」
突然灰崎くんが肩を組んで、
顔を近づけてきた。
心の中でズキン…と音がした。
ひかり
「ふざけないの。ほら、放して?」
わたしは離れようとしたけど、
灰崎くんの力にかなわず、
離れられなかった。
ひかり
「灰崎くんっ!灰崎くんてばっ!」
離れようともがきながら、
灰崎くんをにらんだ。
灰崎
「いいね〜その顔…♪
オレ、フリーの女より
人の女のほうが燃えんだよ。
しかも、虹村さんの女だし♪」
…っ⁈
灰崎くんの言葉にわたしは固まった。
ひかり
「そう…。じゃあ、残念ね。
わたし、もう修造の彼女じゃないの。」
灰崎
「はっ⁈」
灰崎くんが一瞬ひるんだすきに、
わたしは灰崎くんの腕から逃れた。
ひかり
「ことばの通りよ?修造とは別れたの。
フラれたって言うほうがせいか…い…」
ことばが続かなかった。
お母さん以外の人に
初めて自分の口で事実を言ったら、
余計に実感して涙が溢れてきた。