第37章 -崩壊-
ひかり
「ウソっ。全然見てくれないよ。
口もツーンて尖ったまんまだし。
いつもみたいに優しい目じゃないもん。
電話も…出てくれない時あったけど…
わたしのこと…避けてたの…?」
虹村
「避けてねーよ。」
ひかり
「じゃあ、わたし、何かしちゃった?
修造…何か怒ってる…。」
虹村
「なんもしてねーよ。」
ひかりは何もしてない。
勝手にオレがウダウダ考えてるだけだ。
ひかり
「じゃあ、なんで⁈
修造、いつもと違うっ‼︎」
ひかりが淋しそうな表情で叫んだ。
虹村
「………。」
ひかり
「修造っ!」
虹村
「オレみたいなガキより、
ケーキ屋のあの男みたいな
大人の男がいーんだろ⁈」
思わず声を荒げて、言ってしまった。
言ってしまってから後悔した。
ひかり
「…どういうこと?
わたし、いつそんなこと言った?」
ひかりの声が震えている。
怒りというよりも、
悲しそうな震えだった。
道の真ん中だったため、
オレはそのままひかりの手を引っ張り、
あの公園まで行った。
ひかり
「修造っ。痛いってば…。」
虹村
「…わりぃ。」
オレはひかりの手を放した。
オレから手を放したのに、
ひかりに拒絶されたように感じた。
つくづく身勝手だな、オレ…。
虹村
「ひかり…」
ひかりはまっすぐ
オレの目を見つめ返していた。
虹村
「……別れよう。」
ひかり
「……っ⁈」
ひかりの目に一気に涙が溢れていた。
虹村
「オレは…ひかりを優先してやれない。
親父に何かあったら、
オレはひかりを放ってでも、
親父の元へ行く。
親父の病状は安定してねぇけど、
オレは治るって信じてる。
だから…ずっと…」
ひかり
「そんなの!
気にしたことないよ!
お父さんのこと放ったらかしてでも
わたしといたいって言うような人なら、
最初から付き合ったりしないっ!」
ひかりなら…そうだろうな。
でも…オレはあんなちょっとのことで、
ここまで自信がなくなってしまう。
虹村
「でも、オレは最近のひかりの話、
何も聞いてやってない。
いつもオレんちの話だ…。
デートも連れてってやれないし、
会うのはいつも親父の病室だし、
バイトが遅くなっても、
迎えに行ってやるなんてできない…」