第36章 -ケーキ屋さん-
ひかり
「樹(イツキ)さん!
ね、カッコいいでしょ?」
ひかりはさっき話していたコックに
オレのことを指して言った。
ひかりのヤツ…
ココでも色々話してんのか…?
ひかりが”樹”と呼んだその男を
オレは盗み見ていた。
30…はいってないか…。
若く見える感じもするが、
どことなく赤司と雰囲気が似てる…
あの店長も痩せていた頃は、
こんな感じだったんだろう。
樹
「ほんとだなぁ。
はじめまして。
ここのパティシエの樹といいます。
そこのおじさんの息子。
よろしくね。修造くん。」
そう言うと、そいつは、
隙のない完璧な笑顔で
オレに微笑みかけた。
なんでオレの名前知ってんだよ⁈
つか、あの笑顔…
女だったら、イチコロだな…。
女だったらって…ひかりは…?
光平
「うわぁ♪このケーキも美味しそう!」
笑未
「ほんとだっ♪コレも可愛いっ!」
いつのまにかショーケースの前で、
光平と笑未がケーキを選び始めていた。
虹村
「こーらっ。母さんに頼まれたのは、
シュークリームだろ?」
双子達をなだめたが、
ひかりに会えてテンション高いのか、
なかなか言うことを聞かない。
光平
「えー⁈でも、コレも食べたい!」
笑未
「コレ、とっても可愛いんだよ。
ひかりちゃんが作ってくれた
サンドイッチみたいだもん。
お母さんにも見せてあげたい!」
双子たちが見ていたのは、
ウサギとクマの顔のケーキだった。
たしかにひかりが作ったサンドイッチと
よく似ていた。
樹
「ははっ。キミたちすごいなぁ。
そのケーキはね、
ひかりちゃんが作ったんだよ。」
ひかり
「樹さんっ。そんな…。
わたしは思ったこと言っただけで、
作ったのは樹さんですよ。」
そんなこと…初めて聞いた。
そういや、ひかりの話、
最近聞いてなかったよな…。
オレんちの話ばっか…。
樹
「それじゃひかりちゃん考案だと
見抜いた2人に、このケーキは
ボクからプレゼントしようかな。」
は⁈
何言ってんだ、こいつ…。
こんなヤツからなんて貰いたくねぇ。