第34章 -帰り道⑥-(回想)
ひかり
「虹村くん……。」
珍しくひかりが赤くなっていた。
ひかり
「ありがとう。虹村くん。
すごい…嬉しい…。」
虹村
「(嬉しい…?)」
その時思わずオレは顔をあげて、
ひかりを見つめていた。
どれくらいそうしていたのか
わからないが、
お互い無言で動けなかった。
バタバタバタ…ッ
無音の保健室に
廊下からの足音が響いた。
オレたちはハッとして、
お互いの視線を外した。
ガラッ…。
平澤
「ひかりっ‼︎虹村知らねーか?
って、こんなとこにいたのかよ⁈
もうすぐ対抗リレーだぞ!
つか、ひかり足大丈夫なのか?」
平澤さんの好きな人と2人きりで
平澤さんに悪いことしたかな…
と、思う反面、
邪魔されたな…と思う自分もいた。
ひかり
「ちょっと擦りむいただけだから、
大丈夫だよ。
虹村くんが手当てしてくれたの。」
平澤
「あぁ…。
三崎先生、校庭に戻ってたしな。
つか、ひかり…足…大丈夫なのか?」
虹村
「(…?足?また聞くのか…?)」
ひかり
「大丈夫だって!
それより、どうしたの?
応援団長が抜けたらダメじゃない。」
ひかりはサッと話を変えた。
膝のことを隠してたんだな。
平澤
「あぁ…虹村探してて…
あ!つか、虹村っ‼︎
おめぇ、集合時間忘れてんだろ⁈
最後本番前に集合っつったろ?」
虹村
「(やべ…っ。すっかり忘れてた…)」
ひかり
「え?ごめんね、虹村くん。
平澤くん、三崎先生いなくなって、
わたしの手当てしてくれてたんだよ?
だから、許してあげて?ごめんね。」
虹村
「いえ。すみません。
時間の管理できてなかったのは
オレの責任です。」
ひかりはかばってくれたが、
時間忘れてたのは、オレが悪い。
平澤
「別に怒ってるわけじゃねーよ。
ほら、行くぞ!
ひかりも一緒に行けるか?」
ひかり
「うん。
踊るのはムリそうだけど、
対抗リレー、応援するね!」
ひかりは立ち上がろうとして、
少しよろけた。
それをサッと平澤さんが支えて、
オレ達は3人で校庭に戻った。
オレが支えたかった…と、
その時も思っていたが、できなかった。
一瞬ひかりが淋しそうに
オレのほうを見た気がするが、
気のせいだったのか…?
いまだにわからない。