第34章 -帰り道⑥-(回想)
応援席まで行くと、
応援席の隅に人だかりができていて、
ひかりは、何人かの女子に囲まれて
しゃがんでいた。
オレは思わずひかりの元へ駆け寄った。
「ひかりさん⁈どうしたんすか⁇」
「虹村くんっ⁈借り物競争じゃ…?」
「踊ってたらよろけて、
ちょっと擦りむいちゃったの。」
ひかりの友達が教えてくれ、
ひかりさんの足を見ると、
膝下あたりを擦りむいていた。
「虹村っ‼︎おめぇ何やってんだよ?
急げよっ‼︎」
……………。
平澤さんも隣に来たけど、
平澤さんのことを考えている余裕なんてなかった。
「ひかりさん!
保健室連れてきますから…
その前にちょっとだけ
付き合ってください。」
オレはそのままひかりを抱き上げた。
足を擦りむいていたし、
いわゆる…お姫さま抱っこだ…。
「ちょっ…虹村くんっ⁈」
「いいから、黙っててください!」
「でも、さすがに恥ずかしいし、
歩けるってば…。」
「いいからっ!
オレの外周10周もかかってんだよっ!」
今思うと、
その時既に敬語が抜けつつあった。
「虹村くんっ⁈
てゆうか、競技中でしょ?
あっ!ス、スカートッ‼︎
せめてちゃんと押さえてっ。」
「(やべ…っ。)」
オレはその時、
1位になることしか考えてなくて、
慌ててひかりの
スカートの裾あたりから
腕で押さえ直した。
「ちゃんと捕まっててくださいね。」
周りを見回すと、
紅組の奴も札に指示されたものを
見つけたようで、
走り出そうとしていたので、
そっからオレの猛ダッシュが始まった。