第34章 -帰り道⑥-(回想)
残るは借り物競争と対抗リレーだった。
借り物競争は
たいして出たくなかったが、
1年全員参加だからしかたなかった。
借り物競争だけど、別名"借り人競争"。
要は借りてくるのは、"物"ではなく"人"なのだ。
レース自体は単純で、
借りるものが書いてある札まで走り、
自分が取った札に書いてあるものを
借りてくるだけ…という、
いたってシンプル。
札があるのは50m先。
オレはもちろん他の奴に差をつけて、
1番乗りで札を取った。
が、札を取って固まった…。
【コスプレ着てる可愛い人】
「(なんだよ、これ…⁈)」
その時はそう思ったが、
後から聞くと、1年全員参加の
この借り物競争は、
毎年ムチャな札が恒例らしかった。
『白組トップで札まで行ったのは、
えっと、バスケ部虹村くんですね。
が、今札を見て止まっています。』
「(アナウンス、うっせーよっ。)」
だが、オレが考えている間に
他の奴もどんどん札を取っていく。
それぞれ札の内容は
やっかいなようだが、
他の奴なんて気にしてられなかった。
オレが思い浮かぶ人なんて
その時から1人しかいなかった。
「虹村〜っ‼︎
全種目1位っつったろ〜‼︎早く行けっ‼︎」
応援席から平澤さんのでけぇ声が聞こえてきた。
実はその時の運動会は、
平澤さんと約束してたことがあった。
全種目1位取れなかったら、外周10周…。
オレはぐるりと校庭を見回して、
覚悟を決めて、
ひかりのほうへ向かったが、
応援席の様子がなんだかおかしい…。